失った歯が甦る!?実用化が近い歯の再生治療について

最近、歯の再生治療が注目を浴びています。失った歯を取り戻す歯の再生治療は、歯の土台となる歯周組織から考えられた新しい技術です。

歯周病は恐ろしい病気です

歯は食事を美味しく食べるために大切であり、厚生労働省と日本歯科医師会の啓発活動により日頃から歯のケアの意識が高まってきています。

成人の歯の本数は親知らず含めて32本で、そのうち満足のいく食生活が送れる一つの目安が20本以上自分の歯があるかどうかです。最近では20本以上自身の歯を保っている人の割合は年々高くなってきています。しかし平成28年の歯科疾患実態調査によると、自分の歯の本数は40代で28本、50代で25~26本、60代で22~24本となっていて、何本かは自分の歯を失っていると判断できます。

そして歯を失う原因の第1位が歯周病です。

歯周病とは、歯肉炎とそれがさらにひどくなった歯槽膿漏の総称ですが、歯と歯肉の歯周ポケット等に付着した歯垢(プラーク)や歯石にいる歯周病菌が歯周組織に炎症を起こさせ、やがて歯を支えている歯槽骨も破壊してしまい歯がぐらついてきて、歯を失ってしまうことになります。

たかが歯周病と言っていられない

歯周病については、最近テレビなどでも取り上げられていますが、いろいろな病気を引き起こすリスクファクター(危険因子)にもなっていることがわかってきています。歯周病により糖尿病や心疾患のリスクが高くなるとされていて、歯周病による炎症ででてきた炎症性物質が血流を介して心血管に影響を及ぼすことがわかっています。

こういったことからも、まずは歯周病にならないための予防が大切ですが、歯周病になり進行してしまった場合は、歯の再生も一つの選択肢に入ってきます。

歯周病は進行するとスケーリング等では治療できない

歯周病は、歯肉炎など軽度のうちは、ブラッシングやスケーリングによって治療することができますが、重度になると治療できません。歯根の奥深くに歯石が付着してしまっていると、歯肉を切開したりして歯石を除去する必要があります。さらに歯の土台となる歯槽骨歯が破壊されていると、歯の再生治療(歯周組織再生法)が必要になってきます。

歯を取り戻す歯周組織再生治療

歯を取り戻すための歯周組織再生治療は、ひとことで言うと「歯周病で溶けてしまった歯周の骨組織を再生する手術」です。そして、現在行われている歯周組織再生治療としてはGTR法やエムドゲイン法という方法があります。

GTR法

歯周病によって失われてしまった歯槽骨や歯根膜といった歯周組織は、原因となる歯周病菌の巣である歯垢を除去すれば再生してきます。理屈上はそうなのですが、実際には溶けてしまった歯の土台ともいえる歯槽骨が再生してくるよりも早く、周りの歯肉組織が回復してしまい、スペースを埋めてしまうため、歯槽骨が再生するスペースがなくなってしまうので再生ができなくなってしまいます。

GTR(Guided Tissue Regeneration)法は、歯槽骨や歯根膜が再生・回復するまで歯肉がスペースに入ってスペースを潰してしまわないように、スケーリングなどで歯垢・歯石を取り除き、きれいに清掃した後に人工膜によってスペースを確保することで、歯槽骨や歯根膜の再生を助けていく方法で、1982年スウェーデンのヨーテボリ大学の医師らによって報告されました。

人工膜は、吸収性のものと非吸収性のものがあります。吸収性のものはコラーゲン膜や乳酸グリコール酸系の高分子性膜になっていて、非吸収性のものはe-PTFE膜といったものが使われています。大きな違いは、吸収性膜を人工膜として用いた場合は、歯周組織が再生した後に膜を除去する手術が不要です。しかし非吸収性膜のほうが、再生スペースの維持に優れているというメリット・デメリットがあります。

GTR法は手法技術としてはすでに10年以上も前に確立されていますが、手術後にかなりの疼痛が残ったりするので、患者の負担も大きく日本ではあまり普及していません。

GTR法は健康保険が適用されますが、実際施術を行っている歯医者さんは限られていて、1割にも満たない現状です。治療が終わってからは、口腔内の徹底した衛生管理を行い、再び歯周病にならないように注意することが大切です。

エムドゲイン法

エムドゲイン法は、歯周組織再生治療法の1つで、若いブタの歯周病組織のもとになる組織である歯胚からつくったエムドゲインジェル(一般名はエナメルマトリックスデリバティブ)というタンパク質の薬剤を使った歯の再生法になります。

このエムドゲインは歯のエナメル質の形成やセメント質の形成を促進する働きがあります。GTR法と同じく、歯周組織で一番増殖スピードが速いのが歯肉の上皮細胞で、そのため歯槽骨などの再生スペースを邪魔してしまうところに歯の再生の問題点があり、これに対処した方法になっています。

再生させたい骨の部分にエムドゲインジェルを塗ると、歯根の表面に2~4週間とどまり歯肉の入り込みを防ぎながら骨の再生を促し、やがて吸収されます。

すでに40カ国以上で行われ感染症の報告も出ておらず、破壊されたセメント質が再生され、GTR法に比べて操作も簡単であるというメリットも多胃のが特徴。今後歯周組織再生治療の主力となっていくことが期待されていますが、まだまだ行っている歯科医は少ないようです。

歯のぐらつきがなくなり機能的な歯周組織が再生されるまでは数ヵ月から1年ほどかかると考えておいたほうが良いでしょう。保険適用外なので、費用も治療機関によって差があります。

GBR法

歯周組織再生治療ではなく、インプラントの前処理として行われる骨再生誘導法という技法があります。GBR(Guided Bone Regeneration)法は、インプラント治療において土台となる歯槽骨の幅や高さが小さく、うまくインプラントができないといったケースに、足らない部分に骨を移植する骨再生誘導法です。

CTで歯肉の厚みはもちろん、中の歯槽骨の状態などもチェックをし、骨移植を行い、人工膜で覆い歯の再生を促します。この時使われる人工膜は、GTR法と同じもので、吸収性のものと非吸収性のものがあります。

移植する骨は親知らずの奥の顎の骨を歯肉を切開したあと、削りとります。骨組織が再生するには、人工膜をいれてから2~3ヵ月はかかります。インプラントの土台をしっかりさせるということからも、インプラントが抜けてしまったりするトラブルを防ぐ方法として期待されています。

今後の歯の再生治療

歯の再生治療は、メリットが多いエムドゲイン法が中心になっていくと考えられています。現在では、若いブタの歯周病組織のもとになる歯胚から抽出されたエムドゲインが用いられています。

世界40カ国以上で実際され感染症の報告もありませんが、ヒトではなくブタから摂った生物由来の薬剤であることから未知の病原体を含む可能性も否定できません。このため、現在ではヒトの歯根膜細胞などからのエナメルマトリックスデリバティブの研究が行われ期待されています。

また、サイトカインという免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質を歯周組織の欠損した部分に投与することで、歯周組織再生が促進されることがわかってきていて、米国ではすでにサイトカインとコラーゲンスポンジを組み合わせたものが骨再生誘導に利用されています。

日本でもサイトカインの一種である塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)を歯槽骨欠損部に投与することで、セメント質や歯槽骨などの歯周組織の再生があったというビーグル犬などを用いた動物実験での報告もあり、歯の再生を促すサイトカインの研究などが進められています。

また細胞をより効率的に再生する細胞シートなどの開発・研究も行われていて、将来歯の再生の治療の選択肢が、さらに増えていくことが期待されます。

未来に向けた歯の再生治療

現在行われている歯の再生治療は、骨移植をして歯の再生を促し、土台をしっかりさせてからインプラントを行うGBR法、人工膜をつかったGTR法、若いブタの歯胚をつかったエムドゲイン法があります。

歯の再生ポイントは、増殖スピードが速い歯肉にスペースを取られないように、いかに歯槽骨の再生スペースを確保してあげるかがカギとなります。そういった意味では、GTR法とエムドゲイン法は異なったアプローチですが、歯槽骨組織の再生を促すエナメルマトリックスデリバティブをヒト由来にできないか、サイトカインではどうかといった研究が進められ、効果が出てきつつあります。

また組織再生に使われる膜などもいろいろと動物試験やヒト臨床試験も進められています。これらの実用化もそう遠くない時期にやってくるでしょう。

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